プロダクトアウト vs マーケットイン アプローチ
- keanu082u
- 2024年12月26日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年12月29日

大学生時代、ミシガン大学に通っていた私と友人たちのウィッシュリストには、次の3つの憧れのアイテムがありました:スタイリッシュなアキュラ・インテグラ、任天堂のゲーム機、そしてソニーのトリニトロンテレビ。当時、ソニーはイノベーションの代名詞でした。ウォークマンは音楽の聴き方を革命的に変え、テレビはその優れた画質で知られていました。(ちなみに、これはVHSテープがまだ主流だった時代の話です!)
それから10年後、状況は一変しました。韓国のサムスンとLGが世界のテレビ市場でリーダーとなり、ソニーを追い越し、パナソニックや東芝といった他の日本ブランドも影を潜めました。この変化はどのようにして起こったのでしょうか?
その答えは、単なる技術革新ではなく、「視点」の違いにあります。イノベーションの伝統を築いたソニーは、エンジニアリングの優先事項や「顧客が求めるべきもの」という内部の視点に基づいた「プロダクトアウト」アプローチを採用していました。一方で、サムスンやLGは、消費者のニーズやインサイトを中心に据えた「マーケットイン」マインドセットを取り入れました。
ソニーのリモコンに見る失敗例
これらの対照的なアプローチを最も象徴する例の1つが、テレビのリモコンです。市場での支配的地位が薄れつつあった頃、ソニーはGoogleと提携し、高度な技術を搭載したテレビを発売しました。そのリモコンには50を超えるボタンがあり、フルQWERTYキーボードまで付いていました。技術的な優秀さを示したものの、ユーザーには複雑すぎて日常のニーズに合わないと感じられました。
一方、サムスンはボタンが10個以下で直感的なジョイスティックデザインを持つテレビのリモコンを導入しました。このミニマルなアプローチは単なるスタイリッシュな選択ではなく、アメリカの消費者が求める「シンプルさ」と「使いやすさ」に直接応えたものでした。
ソニーのリモコンはエンジニアが「すごい」と思うものを作る「プロダクトアウト」の典型例でした。一方、サムスンのリモコンは消費者の課題に対応し、生活にスムーズに溶け込む製品を提供する「マーケットイン」の好例でした。
市場インサイトの力
サムスンがアメリカのテレビ市場でトップに立ったのは偶然ではありません。それは、消費者調査を深く掘り下げ、適応する意欲の結果でした。例えば、アメリカの消費者が「より大きなテレビ」や「シンプルな操作性」を求めていることを特定し、これらのインサイトを製品デザインやマーケティング、流通戦略に反映させました。このアプローチが、競合他社に対する決定的な優位性をもたらしました。
教訓は明確です。「優れた製品」を持つことと同じくらい、「市場を理解すること」が重要なのです。
マーケットイン・マインドセットを採用する
新しい市場、特にアメリカ市場に製品を導入しようとする際には、次のような問いを自分に投げかけてください:
• 地域の消費者習慣や好みを理解するために十分な時間を費やしましたか?
• 人々が同様の製品を自宅でどのように使用しているか観察しましたか?
• 自国市場での成功体験にとらわれず、新しい仮定に挑む覚悟はありますか?
たとえ日本国内であっても、東京で成功したものが大阪では受け入れられないこともあります。これを世界規模に広げると、そのリスクはさらに高まります。例えば、日本や自国市場でうまくいったものが海外でも自然に成功すると考えるのはよくある誤解です。ターゲット市場の文化や生活に深く浸透しない限り、製品やキャンペーンが全く的外れになる可能性があります。
プロダクトアウトからマーケットインへ
「プロダクトアウト」モデルは技術力を強調し、内部の知識が市場で成功すると仮定します。このアプローチでは優れた製品が生まれることがありますが、実際の消費者ニーズのニュアンスを見逃しがちです。
一方、「マーケットイン」モデルは消費者を出発点とします。課題、文化的な違い、満たされていないニーズを理解し、それに基づいて製品開発やマーケティング戦略を構築します。ソニーのテレビ市場での衰退は、自社の視点に過剰に依存した企業への警鐘です。一方、サムスンの成功は、消費者のインサイトに耳を傾け、学び、適応する力を示しています。
最終的な問い
新しい市場に参入する際は、立ち止まって次の質問をしてください。
「自社ができることを見せることに注力しているのか、それとも顧客が本当に必要としていることに応えているのか?」
この問いの答えが、成功を左右するかもしれません。
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